penguの事例
栃木県の芳賀町・壬生町・益子町
自治体業務を自動化。
町の垣根を越えた、
栃木3自治体のRPA共同調達の
取り組み
自治体DXの難所は、ツールそのものより手前にあります。庁内でどう合意をつくるか。情報政策担当だけで終わらせず、どうやって原課を巻き込むか。そして、数あるベンダーから何を基準に選ぶか。栃木県の芳賀町・壬生町・益子町の3町は、町村会のつながりを活かし、RPA「pengu」を3町で共同調達するという道を選びました。単独導入で一度は挫折した3町が、なぜ「一緒にやる」ことを選んだのか。2026年6月、合同研修を終えた直後のご担当者に伺いました。
- ▲ 3町合同のRPA導入研修を終えたご担当者の皆さま
課題
- 単独導入では、シナリオを作って庁内に広げる
マンパワーに限界があった - 初めから難易度の高い業務に着手し、
ベンダーの伴走なしには実装できず挫折しかけていた - 情報政策担当と原課・管理職のあいだに、DXへの温度差が残っていた
解決
- 町村会の枠組みを活かし、3町でRPAを共同調達。
1町のシナリオを3町で横展開 - 「情報政策担当が自分で使えるか」を最優先の基準にツールを選定
- 箱を使う体験型の合同研修で、苦手な職員でも基本概念を体得
導入の背景と経緯
なぜ「共同調達」だったのか。
単独導入の限界から、仲間づくりへ。
単独導入の限界から、仲間づくりへ。
出発点は、芳賀町からの一本の声かけでした。すでに数年前からRPAを導入していた芳賀町には、単独導入ならではの行き詰まりがありました。「単独でやるとどうしても壁に突き当たってしまう。シナリオを作って広げていくには、マンパワー的に限界がありました。だからこそ、同じ課題を抱えていらっしゃるであろう皆さんと一緒にやっていきましょう、と。仲間づくりをしたいという思いでした」と芳賀町・仁平氏は振り返ります。
声をかけられた壬生町は、ちょうどRPAで足踏みをしていたタイミングでした。必要性は感じていたものの決め手に欠けていたところに声がかかり、まずは一緒に勉強から始めてみようという話になります。
その挫折の理由は、多くの自治体に心当たりのあるものです。「いきなり山のてっぺんを見てしまった、という感じですね。基礎からではなく難易度の高い業務から着手して、結局自分たちでは何もできない。業者さんの伴走があってこそで、実装まではできませんでした」と壬生町・石田氏。
益子町も同じ状況でした。さらにシステム標準化でそれまでの取り組みがリセットされたことが、切り替えを決断する後押しに。地元の販売パートナーである藤井産業からの提案も、そのきっかけの一つでした。
合意形成のカギ
「担当・係長レベルの温度感」と、
日常的な接点が土台に。
日常的な接点が土台に。
複数自治体での共同調達と聞けば、まず浮かぶのは「調整が煩雑になるのでは」という懸念です。しかし3町の答えは、その逆でした。温度感が揃っていたのは、まさに担当・係長レベルでした。
「温度差は当然、町のトップやそれぞれの習熟度によってあると思います。ただ、担当というか係長レベルで行くと、すごく同じ志を持っているんじゃないかなという感じはします」
壬生町・石田氏
「3町の温度感は担当者レベルで合っていたので、お声がけいただいて参加させてもらいました。職員数が減っていくなかで、RPAを導入しないとケアができなくなるという危機感もありました」
益子町・阿久津氏
この関係性は共同調達を機に生まれたものではありません。同じ町村会に属し、互いに視察に訪れ、他県の研修に一緒に出かける。共同調達に限らず日常的に連絡が行き交う関係が土台にありました。「うちだけだと聞きづらいことも、益子町さんが芳賀町さんに聞いてくれたら『俺もそう思ってた』と乗れる部分がある。10市町、25市町が集まるよりも、すごく聞きやすい」と石田氏。そして共同調達を「効く」ものにしていたのが、システム基盤の共通性でした。同じ会計・基幹系のシステムを使っているため、1町が作ったシナリオを他の2町がほぼそのまま使える——この横展開の実利が、3町の合意を後押ししました。
ツール選定の決め手
選定基準は「私が使えるかどうか」。
体験型研修で不安を払拭。
体験型研修で不安を払拭。
数あるRPAのなかで、なぜpenguだったのか。芳賀町・仁平氏の選定基準は、きわめてシンプルでした。「決め手は端的に言うと、私が使えるかどうかです。専門知識がなく、他の部署から異動してきた文系の職員が、プログラミング言語が分からない状態で自動化させることができるか。実際に使ってみて『思ったよりできた』というのがあったので、導入に進めました」。芳賀町が最初に自動化したのは、受信メールと添付ファイルを適切な場所に保存する業務。繰り返しながら一定の時間を要し、手が回っていなかった仕事です。
一方、壬生町・石田氏が挙げた決め手は、キャッチフレーズ、庁内のノーコード活用実績、そして共同調達という枠組みそのものでした。「まずは『誰でも使える』『世界一簡単を目指して開発されたRPA』というところが来た。うちはもともとノーコードのツールを入れていたので、使っていくとみんな慣れていくのが目に見えて分かっていました。もう一つは、町村会の枠組みで選定することで、同じ土台に立って励まし合いながらできるということです」。
▲ 変数の考え方を、実物の教材とホワイトボードを使って学んだ3町合同研修
研修で用意されていたのは、意外にも箱を使ったアナログな教材でした。変数や繰り返し処理といった基本概念を、手と体を動かしながらつかんでもらうための仕掛けです。「読んで覚えるのではなく、体験しながら学ぶのはすごく大きい」と石田氏は振り返ります。
「変数については私も認識できていなかったので、実際に箱を使った研修をやっていただいたことで頭の中に叩き込まれました。内部の伝道師ではないですけれど、広める活動をより推進できるかなと思いました」
芳賀町・仁平氏
「やっぱり操作しやすいですね。直感的に操作できると感じました。以前は『専門性が高いもの』というマインドがあって、自分が担当だったら無理だなという感覚でした。サポート体制も良いので、苦手な職員でも取り組めるのかなと」
益子町・阿久津氏
ケアレスミスで戻ってしまっても自分で気づき、「じゃあここを直そう」と直せる。自分の手順をロボットに教え込む過程そのものが、業務の棚卸しと見直しの機会になる——3町が手応えを感じたのは、その点でした。
これからの本題
原課をどう巻き込むか。情報政策担当が自ら使い、
体験を持って広げる。
体験を持って広げる。
▲ 原課への広げ方について語る芳賀町・仁平氏
3町が口を揃えて「これからの本題」と語ったのが、原課への広げ方です。「原課との温度差はかなりあります。特に管理職と、進めたい側とのギャップがかなりある。まずは担当者レベルで『こういう簡単に使えるものがあるよ』と情報共有しながら、検証を重ねて活用できればと思っています」と益子町・阿久津氏。
3町が採ったのは、いきなり全庁に号令をかけるのではなく、まず情報政策担当が自分で使えるようになり、その体験を持って原課に入っていくという順序でした。「触ってみると『このボタン、このボタン』と分かりますし、繰り返していけばいいというのが見える。一度体験して自分で触ってみれば、原課の方も皆さん同じように使えるかなという印象を持ちました」と仁平氏。
原課に持ちかけるテーマはこれから詰める段階ですが、「こんな課のこんな業務を自動化できたら」という構想はそれぞれに挙がっています。芳賀町は福祉系の相談業務の記録整理、益子町は税務課の還付処理、壬生町は年度後半に会計関連業務を予定。3町が違う領域から着手するからこそ、事例の共有が効いてきます。石田氏は、固有名詞をぼかしてでも「こんなことを自動化した」という事例が行政内に流通することの価値を強調します。
全体ロードマップ
3町共同調達
全体ロードマップ(2026年度)。
全体ロードマップ(2026年度)。
前半は情報政策担当がRPAを「自分で使える」状態をつくる期間、後半は原課を巻き込み、庁内へ広げていく期間です。9月には原課の皆さんがRPAを体験する場を、12月と2月には原課による報告会を予定しています。
▲ 3町共同調達 全体ロードマップ(2026年4月〜2027年3月)
- ■ 前半(4〜9月)は情報政策担当がRPAを「自分で使える」状態をつくる期間。
- ■ 9月に原課がRPAを体験する場を設け、後半は原課を巻き込み庁内へ展開。
- ■ 12月・2月に原課による報告会を実施し、1町のシナリオを3町で横展開していく。
今後の展望
目指すのはツールではなく、組織と人。
5年後・10年後を見据えて。
5年後・10年後を見据えて。
最後に、3町が目指す先を伺いました。語られたのは、ツールではなく組織と人の話でした。
「5年後、10年後にはRPAも生成AIも当たり前の時代になっている。デジタルを受け入れ活用する土壌づくりが必要で、今は種をまいている状況です。全員がプレイヤーになるのは無理でも、中級編くらいまでは知っていただいて、そこから展開できる人、指示できる人を増やしたい」
壬生町・石田氏
「将来管理職になる職員をケアしていくなかで、5年後10年後に理解のあるリーダーを育てた上で、いろいろなツールを使って業務改善や効率化ができればと望んでいます」
益子町・阿久津氏
「役場職員が本来の住民サービスを対面で提供する。そこに専念できるようバックヤードを自動化し、業務負担を軽減する環境を作っていくのが責務かなと。壁に当たってくじけそうにもなりますが、仲間を増やして励まし合いながら進めていくことが大事かなと」
芳賀町・仁平氏
3町の取り組みは、まだ始まったばかりです。単独では続かなかったRPAの活用を、複数の自治体で支え合う形なら定着させられるのか。その答えは、これからの1年で見えてきます。単独ではくじけそうな壁も、仲間とともに励まし合いながら——栃木の3町と、オムロンはpenguを通して共に走り続けます。
※ 本記事の内容および所属・役職は取材当時(2026年6月)のものです。ロードマップの実施内容・時期は変更となる場合があります。